Los Vascos DBR Cabernet Sauvignon Colchagua Chile 2018|ロスバスコス カベルネソーヴィニヨン コルチャグア チリ
ワイン名:ロスバスコス ドメーヌバロンロートシルト<カベルネソーヴィニヨン> 2018
生産国&地域:チリ / セントラルバレー、コルチャグアバレーDO
ドメーヌ:ビーニャロスバスコス
品種:カベルネソーヴィニヨン100%
ヴィンテージ(収穫年):2018年
値段:$7 (2021年)
購入場所:コストコ@San Barnardino
日本での購入可否:楽天などで可能
ラベルにはロスチャイルド (Les Domaines Barons de Rothchild (Lafite), DBR) 、WSETの教科書にもロスバスコスのラベルが載っていた記憶があるぞ!一本7ドルという安すぎる値段がちょっと気になるものの、コストコだしそんなに悪いものではないはず。
ロスチャイルド家はドイツ出身の富豪一家で、貴族と同じくらいの権力を持っていたそうです。1700年代以降、金融やオイル業などで成功した彼らのビジネスの一つがワイナリーの経営です。1850年代にボルドーのシャトー、「シャトームートンロートシルト (Chateau Mouton Rothchild) 」と「シャトーラフィットロートシルト (Chateau Lafite Rothchild)」を購入したことから始まり、その後も一族は甘口ワインで有名なソーテルヌやラングドック-ルシヨン地方などフランス各地のぶどう畑やワイナリーを購入します。シャトームートンロートシルトとシャトーラフィットロートシルトはボルドーの格付け一級シャトー。さらには高級ワインで有名なナパバレーの「オーパスワン (Opus One)」もフィリップ・ロスチャイルドがロバート・モンダヴィと合同で設立したワイナリーだし、1988年以降はチリやアルゼンチンのボデガ (Bodega) を買収。最近では中国東部の山東省イェンタイ(煙台)近くになんと中国版ロスチャイルドも設立!ドメーヌドロンダイ (Domaine de Long Dai) というそうです。ロスチャイルド家の経営するワイナリーは世界各地にあります。
今日のテイスティングワインのヴィーニャロスバスコス (Vina Los Vascos) は1988年にロスチャイルドの傘下に入った、チリのコルチャグアバレーにあるワイナリーです。
まずはチリのセントラルバレーにあるサブリージョン、コルチャグアバレーDO (Colchagua Valley Denominaciones de Origen) について。セントラルバレーは首都のサンチアゴの南に広がる広大な地域で、温暖でぶどうが成熟しやすく栽培にあまり手がかからないことからメルローやシャルドネなどを中心とした「安いチリワイン」の多くがこのエリアで作られています。セントラルバレーのサブゾーンとしてコルチャグアバレーやマイポバレー (Maipo Valley) などがあります。マイポバレーは首都に近く古くからチリのワイン産業の中心地です。
ロスバスコスが位置するコルチャグアバレーは西は太平洋、東はアンデスの麓まで東西に広がる横長の地域。一つの地域に2つの異なる環境を持ち合わせています。強い日差しで温暖で乾燥した土地柄ですが、アンデス山脈に近い場所では山から吹く風で夜は涼しくなります。日中との寒暖差によりぶどうの酸味を保つのに最適。海岸に近い地域では南極からのフンボルト海流によって涼しい空気が吹き込みます。より海に近いエリアでは霧も発生し、カリフォルニアのナパやソノマに近い地中海気候。カベルネソーヴィニヨンはチリで最も多く生産されているぶどう品種ですが、温暖で雨も少ないコルチャグアバレーではカベルネソーヴィニヨンは完熟しやすく、特にフルボディの赤ワインがおいしい地域です。
さてそんなコルチャグアバレー産のこのワイン。カベルネソーヴィニヨンの郷でできたロスバスコスのカベルネソーヴィニヨンは100%カベルネ。メルローやカルメネール、シラーなどとブレンドされることも多いチリの赤ワインワインの中で、チリのカベルネソーヴィニヨンがどんな味がするのかピュアに楽しめるワインでした。当たり前ですが、経営が同じだからといってボルドーのシャトーラフィットロートシルトの赤を意識して飲むと全然違いますのでご注意を。このワインにはボルドーの渋すぎるタンニンも青臭さも全くありません。いかにも大量生産されていそうな、軽い赤ワインです。毎年の平均生産数は25万から30万箱ですって(25万箱×12本!)。かといって、安い赤ワインにありがちなタンニンが強くて水っぽいだけという感じも一切ありません。ソフトで柔らかいタンニンで口当たりもGOOD!
ホームページを見るとドメイン・ヴィーニャロスバスコスが正式名称です。ドメーヌ (Domaine) とは一般的に農園で栽培したぶどうをつかって醸造から瓶詰めまで行う生産者のことをいいます。さらにこのワインのボトルにもEstate Grownとあるのでコルチャグアバレーにある自社のぶどう畑で栽培されたぶどうを使ってできたカベルネソーヴィニヨンです。でもホームページを見ると、ロスバスコスのシャルドネとソービニヨンブランにはカサブランカ (Casablanca) と記載があり、セントラルバレーの北部にあるアコンカグア地域のサブリージョン、カサブランカバレーにある契約農家から購入したぶどうを使っている模様。カサブランカバレーは品質のよいソービニヨンブランが生産されていることで有名です。ドメーヌではありますが、一部外からのぶどうも使っているということですね。
ボルドーのシャトーラフィットのワインは世界中にファンがいて、シルキーで上品な赤ワインは1855年から今日まで高く評価されています。でもそんな一級シャトーやオーパス、サッシカイアなど一本数百ドルするプレミアムワインの多くは毎日飲みたくなるワインではない、と個人的に思います。値段が高いからだけではなく、飲みごたえがありすぎて私はとても毎日は飲めません。だからオーパスが出すセカンドラインのオーバーチュア (Overture) やロスチャイルドが廉価版として出すムートトンカデ (Mouton Cadet) がとても人気があるんだと思うのです。彼らの長い伝統や技術を生かした、安いけれどもしっかりその地域らしい正統派のワインが楽しめるのがセカンドラインの存在意義だと私は思います。このロスバスコスのカベルネソーヴィニヨンもそんなワインです。ロスチャイルドが長年かけて作り上げてきた、がっかりさせないお手頃チリワイン。「チリと言えば安い」というイメージもすっかり忘れて楽しんだワインでした。