清酒とワインをハイブリッドで醸造 – 山形・米沢「沖正宗」とワインの関係 – 浜田ワイナリー(1)

浜田ワイナリーのピノノワール

浜田ワイナリーのピノノワール

WSET Level 3の試験勉強中だし、そうでなくてもおいしいワインが飲みたいね!2020年10月、急に思い立って山形のワイナリーを訪ねました。日本のワインと言えば山梨県。でも山梨のワイナリーへは行ったことがあるし、山梨でなければ北海道?それとも長野?どこに行けばおいしいワインが飲めるのかわからなかったので日本ワイナリー協会のサイトへ。ここのサイトのワイナリーマップが結構役に立ちます。

ワイナリーマップを見ると山形にはワイナリーが結構たくさんあることに気付きます。山形にこんなにワイナリーがあるなんて!地図のワイナリーを一つずつ調査。その中に「浜田(株)」というワイナリーを発見。~ワイナリーとか、~ワインっていう名前のところがほとんどの中、なぜか株式会社。浜田さんのお問い合わせ先のメールに連絡してみたら、返信がきて見学をさせてもらえるとわかったので、自宅から新幹線で簡単に行けるのもいいし、山形のワイナリーの旅に出発します。

1866年に山形県の米沢に創業した浜田株式会社は「沖正宗」と呼ばれる日本酒造りで150年の伝統をもつ酒蔵。そう、江戸時代から続く酒蔵がワインも作っているのです。朝晩のキリッとした空気と山々から湧き出るきれいなお水に恵まれる米沢は、日本有数のお米の産地。きれいな空気とお水ときたら果樹栽培も!米沢から少し北にある赤湯では特にぶどうの栽培が盛んで、小高い丘の斜面にぶどうの棚が並ぶ様子があちこちに見えます。

赤湯温泉にある赤湯御殿守という無料ワインとか特典がすごい温泉宿に泊まり、ワイナリーへは電車で行くことに。赤湯温泉駅からJR奥羽本線で南に二駅、置賜駅で下車。駅を降りる人もいなければ、そもそも駅の周りに家もない。もちろん無人駅。そんな場所にタクシーはいないので置賜駅からワイナリーまでの3.8kmは徒歩で。最上川にかかる橋を渡り、米畑を越え、途中小さな食堂でお弁当を食べ、歩くこと1時間。ワイナリーというよりは工場という感じの建物が見えてきて、浜田さんに到着です。

製造工程などの見学ができたのは主に日本酒の方で、ちょっと見当はずれでしたが、ピカピカのステンレス樽がたくさん並ぶ工房を見せていただきました。機械化で衛生管理や温度管理などがしやすくなった今も、おいしい日本酒の醸造のためには熟練の杜氏さんの技が欠かせないそうです。日本酒に使われるお米はとても小さくなるまで磨かれていることを初めて知りました。お米の外面は栄養素が高く、お酒に雑味が出たり日本酒の香りが消えてしまうからだそうですが、そんな工場見学でお米がどこまで磨かれるのか実際に削られたお米も見せてもらうことができます。

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さて、浜田ワイナリーのワインの話。。。10月も半ば。ぶどうの収穫も醸造も終わった後、今から熟成が始まるというような時期で醸造の様子などは見学ができませんでしたが、米沢のお米の産地で、しかも歴史ある酒蔵で、どうしてワイン造りをしているのか伺うことができました。

創業家の一人がワインの醸造について検討を始めた1950年代。まだまだ海外旅行も珍しい時代にスタッフをフランスのボルドー大学へ送ったことがきっかけだとか。山形の自然環境にあったぶどう植栽やワイン醸造の基礎を一から研究し、米沢のこの地でワイン造りに向いたぶどう栽培に成功したそうです。すでに100年ほどの歴史のあった沖正宗の歴史に、新しいお酒「ワイン」の歴史が刻まれたのは、ワインの研究が始めてから20年経った1976年のこと。以来、清酒造りの伝統と山形の風土がコラボレーションしたユニークなワイン造りが続いています。

山からの冷たい空気と山から流れてくるきれいなお水はお米づくりだけでなく、ぶどうにもぴったり。そんな土地の味わいが染み込んだ完熟していながらもしっかり酸味が残るぶどうが収穫できるそうです。日本酒もワインも、お米やぶどうといった農産物を相手に作られている点では全く同じ。米、麹、水が原料となる日本酒。毎年変化する米の品質と麹の微生物の作用を見極める杜氏の腕なしにいいお酒はできません。ぶどうと酵母というシンプルな2つの原料から作られる浜田ワイナリーのワインも、毎年異なるぶどうの品質によって、醸造方法を調整しながら丁寧に作られています。こんな時代でも、人間にしかできないものがあるということですね。

浜田ワイナリーのワインは自社農園で栽培されたぶどうと契約した農家からのぶどう、両方が使われています。見学に行った時にはまだ若いピノノワールの木が植えられていました。聞くところによれば新たに挑戦中のぶどう品種だそう。雪によって木が傷まないように斜め45度に傾斜して植えられています。これまで私が行ったことのあるワイナリーではこんなの見たことない!新しいぶどうの木からワインが生産できるのは植えてから3年後。浜田さんのピノノワールができる頃、また伺いたいと思います。

お楽しみのワインテイスティングのストーリーはまた次回!(2)に続きます。

Maya

アメリカのロサンゼルス郊外在住。日本の大学卒業後から15年以上、仕事も趣味も旅行な毎日で60か国以上をふらふら。時に母を連れ、そして途中には旅行の友(主人)を見つけ、強引に(?)あちこち。東京にある秘境系旅行会社でワイナリーツアーのアレンジや自分でも世界各地のワイナリーを訪ねるうち、ワインのことも知りたくなり、旅行の仕事の片手間にワインの勉強も。WSET Level 2資格保持者。日本のソムリエ資格同等レベルのWSET Level 3結果待ち。

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