Dr. Loosen Erdener Treppchen Riesling Auslese Mosel 2019 | ドクターローセン アーデナートレプチェンリースリング アウスレーゼ モーゼル

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Dr. Loosen Erdener Treppchen Riesling Auslese Mosel 2019

<WSET Level3 方式テイスティングノート>
カラー:淡いレモン
香り&味覚:強いアカシア・レモンピール・グレープフルーツ・桃・アプリコット・サルタナレーズン・シロップ・はちみつ・マーマレード
発達段階:若い
甘味:ミディアムスイート
酸味:高い
アルコール:低い(8%)
ボディ:ミディアム+
後味:長い
品質:非常に良い (Balance, Length, Intensity, Complexity)
飲み頃:今飲んでもよいが、 熟成の可能性がある

ワイン名:ドクターローセン アーデナートレプチェン<リースリング・アウスレーゼ>2019
生産国&地域:ドイツ/ モーゼル・アーデナートレプチェン
ワイナリー:ドクターローセン (Dr. Loosen)
品種:樹齢100年以上のリースリング100%
ヴィンテージ(収穫年):2019年
値段:$30 (2020年)
購入場所:wine.com
日本での購入可否:楽天などで可能


アルコール度が低くて少し甘めのワインなら私はドイツのリースリングを選びます。生産地はどこであれ10ドルくらいのドイツ産リースリングならだいたいどれでも華やかな香りを楽しめるし、私のような素人でも味の予想がしやすいのがいいね。

リースリングはドイツで最もメジャーぶどう品種です。寒さに強く、つぼみがゆっくりつき、熟すのもゆっくりなのでドイツだけではなくカナダなどの寒いエリアでポピュラー。リースリングの魅力はアカシアやレモンピール、桃など香水のような強い香りで、収穫の時期が早ければフレッシュな香り、熟していくにつれて桃のネクターのようなこっくりとした香りに変わります。またリースリングはぶどうが熟して糖度が高くなっても、酸味があまり失われないので、甘みと酸味のバランスがいいワインがたくさんあります。ドイツリースリングは、アルコール発酵を途中で止めることで、アルコールへと変換しない糖分がワインに残るため、アルコール度は低く甘めのワインが多いのも特徴です。WSET Level2 の本当に初歩的なワインの勉強をしていた時でも、ドイツ産リースリングなら目隠しのテイスティングをしても判別ができるなーと思ったくらい。リースリングは他のぶどう品種にはない際立った特徴があります。

ドイツ国内には原産地呼称制度によって定められたぶどうの生産地域は13カ所ありますが、フランスのようにその地域で使われるぶどう品種やワインの醸造方法についての制限はありません。ドイツ産のワインのラベルにはぶどうの品種名が記載されているのはそれが理由。そのかわりに重要視されるのは、収穫時のぶどうに残っている糖分の量。残糖量よってワインの品質が区別されています。フランスやイタリアのワインは格付けもあったりするので生産地やシャトーの名前を元にざっとしたワインの味の予想がつきますが、ドイツワインはよほど名の知れたブランドでなければ開栓するまで、ドライなのか、すっぱいのか、フルボディなのか、さっぱりわからないということが起こりえます。そんな「ドイツワイン味わからない問題」を一挙解決とまではいかなくても、ある程度解決するためにできることは残糖量を参考にすること。ドイツワインのルールを一度覚えれば、ワインのラベルでそれがどんなワインのスタイルなのかだいたい見当がつきます。

ドイツワインには、

クヴァリテーツヴァイン (Qualitätswein)
プレディカッツヴァイン (Prädikatswein)

というドイツ国内の13の地域で生産されたものに限定して、収穫時の残糖量によって区別される2つのカテゴリがあります。プレディカッツヴァインはクヴァリテーツヴァインよりも残糖量が高いぶどうが使われ、かつ、より小さな生産区域で収穫されたぶどうが使われています。どちらのカテゴリも地域間やぶどうのブレンドは認められていません。今回テイスティングしたドクターローセン アーデナー トレプチェンはプレディカッツヴァインです。

プレディカッツヴァインは残糖量によってさらに、

カビネット (Kabinett) - 通常のシーズン中に収穫されたぶどう=糖度が最も低い
シュペートレーゼ (Spätlese) - 遅摘み
アウスレーゼ (Auslese) - 遅摘み&房選り
ベーレンアウスレーゼ (Beerenauslese) - 遅摘み&粒選り
アイスヴァイン (Eiswein) - 木で凍った状態で収穫されたぶどう
トロッケンベーレンアウスレーゼ (Trockenbeerenauslese) - 貴腐状態で干しぶどうになった粒=糖度が最も高い

6つにカテゴリ分けされます。このカテゴリは結局で甘味のインジケーターでもあるということになります。ベーレンアウスレーゼから上、アイスヴァインとトロッケンベーレンアウスレーゼからは100%甘口ワインがつくられます。糖度の低いボトムのカビネットから上、シュペトレーゼ、アウスレーゼまでは辛口~ミディアムスイートのワインのどれかにあたります。感覚的に10ドルから40ドルくらいのドイツのリースリングのほとんどはオフドライ~ミディアムスイートという感じでしょうか。ですが、辛口の可能性もあるということを頭の片隅に置いておきましょう。今回テイスティングしたドクターローセン アーデナー トレプチェンはラベルの通り、アウスレーゼです。甘口ワインに近い、はっきりとした甘さのあるワインです。

VDPのロゴを発見したら?品質のよいドイツワインの証拠です

VDPのロゴを発見したら?品質のよいドイツワインの証拠です

このようにぶどうの甘味が品質の基準となってきたドイツワインですが、ボルドーの格付けや畑ごとのランク付けなどがないため、ワインそのもの品質を判断しにくいということが長らく議論となっていたのも事実。現地のドイツトップクラスのワインを醸造する200のワイン生産者が集まってできたVDP (プレディカッツ生産者協会、Verband Deutscher Prädikatsweinguter) が、独自の格付けがされた畑での栽培からボトル詰めまでの生産に至る全工程において厳格な品質基準を設定しドイツワインの品質向上に大きく寄与しています。2012年からはVDPによってぶどう畑は4段階にカテゴリ分けされるようになりました。畑のカテゴリにより収穫量などが制限されており、畑のカテゴリはワインの品質にそのまま直結しています。ドイツワイン法とは一切関連しない私的な団体が作ったルールではありますが、2012年の運用開始以来、世界的にも広く受け入れられています。雑誌『デカンター』によれば、2019年現在、VDPのぶどう畑はドイツ全土にあるぶどう畑のたった5%。ドイツのワイン業界の年間収支のうち、VDPが生産したワインがその7.5%を占めているそう。VDPが生産するワインの品質が高いということ。今回テイスティングをしたワインの生産者Dr. LoosenもVDPメンバーであり、このワインはVDPによって格付けをされたぶどう畑からできたワイン。ドイツワインを買う際にはアルミのカプセルのロゴにも注目です。

ドイツワイン法独特のルールからVDPのロゴまでいろいろ調査をして、ついつい長くなりました。Dr. LoosenはWSET Level2 の教科書にも(ラベルがワインの一例として)出ていました。Dr. Loosenは200年以上にわたってモーゼルでワインを醸造してきた老舗のワイナリー。このワインに使われたぶどうはヴェーレン (Wehlen) の隣町にあるアーデナートレプチェンというVDPの4つのカテゴリのうちErste Lage(フランス的に言えばGrand Cru相当)の畑から収穫されたリースリングが使われています。アルコール度が8%と低いですが、甘味も酸味もしっかりあるので、数年寝かせてから飲むこともできそうなワインです。テイスティングの宿題にも向いた、これぞドイツのリースリングといった感じの典型的な上質リースリングの一つです。


Maya

アメリカのロサンゼルス郊外在住。日本の大学卒業後から15年以上、仕事も趣味も旅行な毎日で60か国以上をふらふら。時に母を連れ、そして途中には旅行の友(主人)を見つけ、強引に(?)あちこち。東京にある秘境系旅行会社でワイナリーツアーのアレンジや自分でも世界各地のワイナリーを訪ねるうち、ワインのことも知りたくなり、旅行の仕事の片手間にワインの勉強も。WSET Level 2資格保持者。日本のソムリエ資格同等レベルのWSET Level 3結果待ち。

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